菓游 茜庵
四国徳島城跡をのぞんで佇む、静かな菓子の庵。 上質ながら、遊びごころあるお菓子づくりを大切にしています。 心地よく和と暮らすお手伝いができれば幸いです。
長月の喫茶に、ようこそ。
夕暮れの風が、秋を誘います。
九月九日は、陽の数が重なる日。
別名「菊の節句」とも呼ばれます。
平安時代には 真綿で菊をおおい
その露と香りで 美しさと健康を祈ったそう。
存在感のある練り切り生地に、さらりと上質な薄墨あん。
どうぞ 健やかな秋を、お迎えくださいますように。
「立礼席(りゅうれいせき)」とは、椅子とテーブルの茶室。茜庵本店で喫茶をご利用のお客様には、こちらのスペースでお菓子をお楽しみいただきます。
おや何かしら、と ちょっと目にとめていただきたいのが、こちらの床飾り。まずは軸から。
豆色紙を表装したものですが、とある和菓子の語源となる句がかかれています。
平安時代の歌人で学者の源順(みなもとの したごう)が、宮中の行事で詠んだ和歌
「水の面に 照る月なみを 数ふれば 今宵ぞ秋の 最中なりける」
池の水面に映る月が美しいと感じるのは、中秋の名月(=最中の月)だからだなあ という感じ。
宴席で振る舞われた丸餅が、おやおやこれぞ 美しい最中の月ではないかと 大層盛り上がったようです。
時がうつり、江戸の時代。吉原近くの菓子屋がこの「最中の月」に商機を見出します。
砂糖が庶民の憧れだった時代、遊郭のお目当ての女性にお土産いかが・・・で 大ヒット。
この時の「最中の月」が時代を重ねて、現在の「最中」の形になったのだそう。
美しさと健康を祈る「着せ綿」の床飾り、こちらも茜庵の手しごとです。
お月見にちなんだ、茶器をあわせて。
どっしりとしたお軸がかかることの多い本席ですが、今月はこちらもお楽しみの軸がかかっています。
ざんぐりと、野趣ある魚籠の花入にあわせたのは、文化財の保護研究に多大なる貢献をされた、田山方南氏による書簡。
交流のあった入江弁護士から 酢橘が届いた、ありがとうの文ーすいすいと陽の風情で、茶目っ気たっぷりに描かれています。
秋の七草をあしらった、優美な器をあわせて。
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しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。