ひとつひとつ、手で包む。
上用饅頭が、できるまで。
素材の良さに、そっと手を貸す。
「たとえ一流の技術をもってしても、
二流の材料を使ったら、二流のものしか生まれない」
とは、私たちの恩師の言葉。
人の手が一流に見せようといかに技術を加えても、
素材そのものの持つ美味しさには
かなわないのだと教えてくれました。
素材がよければ技術なんていらないということでは
もちろんなく、「あえて、これ以上手を加えない」という
按配や加減も技術のひとつの形だと気がついたのは、
それからさらに、数年がたってから。
小手先の技術ではなく、素材が存分にその良さを
ひきだせるようそっと手を貸す、という言い方が
正しいのかもしれません。
とにかく良い素材を使おう。
素材の良さを活かしきる手間暇を、
決して惜しまないでいよう。
茜庵の上用饅頭は、創業以来の想いが
たっぷりとつまったお菓子です。
生地と、あんこ。それだけ。
あんこに山芋、おさとう、上用粉。材料は、それだけ。
シンプルで、ごまかしがきかないお菓子。
だからこそ、ひとつひとつの工程を、丁寧に。
産地にこだわった国産の山芋を、丁寧にすりおろす。
自家製のあんこをひとつひとつ、生地に手包みしたら
ふっくらと、蒸しあげる。
文字にすると、たったこれだけ。三行のこと。
だけれども、この「手包み」、
くるくると形よく、味よく仕上げるまでに
何年も何年も、職人は技をみがきます。
いまどき、手でつくるなんて。
今では、たくさんのものが、
機械で作れるようになりました。
そんななか、あえて「手でつくる」のが
茜庵のおまんじゅう。
いろんな考え方があって、作りかたがあって
いろんなお菓子があって。
どれもが 正解不正解はないけれど、
茜庵のお菓子は、お客さまにしみじみと
「美味しいなあ」と言うていただけるものであってほしい。
上用饅頭は、お客様の人生の大切な節目に
そっと寄り添う和菓子。それならば、
手間がかかっても、やっぱり一番美味しい方法で
お菓子をつくって、お届けしたい。
茜庵のお赤飯も上用饅頭も、じっくりと素材を
下準備したのちに、美味しくなあれの想いをこめて、
一つずつ丁寧に蒸し上げるから
お渡しするまでに、少し時間をいただきます。
注文したら、すぐ届く。そんな時代になった今、
そんなお菓子も、あってもいいように近頃は思います。