素材へのこだわり
美しく輝く、山里のこと。
柚香と書いて、ゆこう。
なんとも美しい響きをもつ この果実、実は地元徳島でも知らない人が多い、希少な存在です。
「ゆこうは、本当に知られてないですねぇ。 徳島県でのみ栽培されている、たいへん希少な果実です。」と、阪東農園の阪東さん。
どうやら自然交雑のなかで200年ほど前に生まれた樹木のようですが、多くは知られていないのが、実のところ。
昭和の大寒波で多くがなくなり、今では徳島県の南部、上勝町や神山一帯でのみ栽培されているそうです。
不思議な果実
上勝町のたおやかな自然の中で有機栽培を営む阪東さんは、有機や果実のプロフェッショナル。
畑を訪れた庵主が、どんな質問を投げかけてもすぐさま回答してくれる、頼れる生産者さんです。
数年前に「ゆこう」の存在を知った庵主が真っ先に訪れたのも、この阪東農園。
やっぱり、味は柚子に似ているの?と尋ねた庵主に、まずは一口、と切り分けてくれました。
柚子よりも 複雑で、控えめな香り。
すだちよりも はんなりと、華やかな酸味。
なんともこれは 不思議な果実です。
有機で育つ、板東さんのゆこう
徳島県上勝町(かみかつちょう)。
ここは、元気なおばあちゃん達が育てる"葉っぱ"が主役、「いろどり」の町。
この町で茜庵のゆこうを育ててくれるのが、有機栽培にこだわる、阪東高英さんです。
標高400メートルほどの南向きの斜面に位置する、阪東農園。
澄み切った空気に、庵主も大きく伸びて、深呼吸。
阪東さん
この畑は、朝夕の温度差が大きい場所。
寒暖の差が大きいということは、ゆこうにとっては香りが強くなり、味がしまるということ。
魚に例えれば、潮にもまれて身が引き締まるという感じでしょうか。
阪東さんのゆこう畑は、かつて棚田があったところへ苗木を定植したもの。
急な斜面の草を刈る作業は危険も伴う重労働です。
加えての、有機栽培。農薬に頼らないということは、全て手作業を意味します。雑草も生えて、虫も喰う。全てを手作業でカバーするには、相当な労力となります。 けれども、自分達が作ったものは、安心して使って欲しい、本当の味を口にして欲しい。阪東農園のこだわりは、この思いに尽きると言います。
阪東さん
確かに、有機農法だと思うように量は取れません。
量が取れないということはどうしても(コストが)高くなってしまう。
でも、質を保ち続けることで、わかってもらえる人には、 わかってもらえると思います。
未来の子供達のため、地球のためにも、 安全な食品を作り続けることが、私たちの使命だと思っています。
香り柚子、酸味すだち、味ゆこう
有機の"ゆこう"普通の"ゆこう"、食べくらべると、確かに違いがわかります。
酸味がまろやかで、香りも深い。
それでいて、最後に残るのは、ほのかな甘み。
阪東さん
香り柚子、酸味すだち、味ゆこう という人もいます。
ゆこうは謙虚な存在ですが、調味料としては、一級品。
口当たりがよく、上海の料理人にも愛されています。
徳島の山間部でひっそりと栽培される 柚子のような、すだちのような、不思議な存在。
謙虚なような、謙虚でないような、複雑な味わい。
なんとも面白い果実ではありませんか。
一口食べて 不思議がる お客様の顔を思い浮かべて、おもわずニンマリ。
よし、今年はゆこうを使ったお菓子を創ろう、と決めました。
ゆうたま
柚子・すだち・山桃・梅・ゆこう。
甘酸っぱい五種の果実が口いっぱいに広がる一口菓子です。