茜庵

素材へのこだわり

茜庵のいちごのこと

「苺はお菓子に使わない」と決めていました。
毎年試作を重ねるけれど、それでも、これだという素材に出会えなかったのです。
でも、この苺なら、大丈夫。
この人ならば、大丈夫。
頑固な庵主にそう思わせてくれたのが、田村さん。
茜庵が、30年目にようやく出会った理想のいちご、 「さくらんぼいちご」の生産者さんです。
もぎたての苺が求肥のお餅でふっくらと包まれた姿は、 まるで純白のわたぼうしをかぶった花嫁さんのよう。
茜庵の春を、愛らしく清楚に飾ってくれます。

さくらんぼ苺を育てる田村さん

徳島県美馬市。
総面積の8割を山に囲まれた清らかな土地に、田村さんの苺ハウスがあります。
一歩足を踏み入れて、まず驚くのは、その高さ。
子供の背丈ほどの場所に可憐な赤い実が、きらりきらり。

田村さん

皆さん最初はびっくりされるんです(笑)。
苺って地べた(=地面に直接)に植わってるイメージでしょ。
でも、うちは高さを出してます。
まずね、衛生にいい。
そして、人が作業しやすい。
実だけじゃなくて、土も葉っぱの裏も、ちゃんと見える。
ひとつひとつの苗にしっかり時間をかけられます。

さくらんぼ苺は棚床で育てられています。

虫は働きもの

こだわりの苺作りを陰で支えてくれるのは、ミツバチと、天敵昆虫と呼ばれる小さな生き物たち。

田村さん

まずミツバチ。
彼らが受粉をしてくれます。
ハウスの温度にしっかり気を配るのは、我々の仕事。
そうすると、ブンブンと元気に飛んでくれて、きれいな形の苺ができます。
続いて特徴的なのが、天敵昆虫と呼ばれる生き物を使うこと。
害虫の天敵となる昆虫を土に放ち、被害を抑える農法のこと。
ミツバチも、天敵昆虫も、農薬をとても苦手とする生き物なんですね。
だから、(農薬は)ほとんど使えません。
小さなお子さんに皮ごと食べていただくものだから、農薬の力に頼るのではなく、 なるべく自然に近い形でやりたいと思っています。

給水管からも、ちらちらと可愛らしい芽吹き。
低農薬のこだわりと、優しさが感じられて、何だか嬉しくなります。
取った方が(見栄えは)いいんでしょうけれど、これもまた可愛いですからね、とは、田村さん談。
実は苺の葉っぱによる重度の花粉症(!)な田村さん。
苺農家さんは、結構多いのだとか。

さくらんぼ苺でつくる、いちご大福

最良の素材を信条とする店だから、和菓子屋の命とも言える餡には、庵主のこだわりが詰まっています。
丹波大納言と北海道産小豆。
最高峰の小豆を清流吉野川の水でじっくり炊き上げた、この口どけに負けない苺が欲しい。

田村さん

和菓子用の苺は、ただ甘いだけじゃ駄目。
甘みと酸味のバランスこそ重要なんです。
さくらんぼいちごは、酸味の加減がとても良い。そして、何よりもジューシーです。
複雑な味わいが出るから、餡にも負けない。

たわわに実ったいちごたち
新鮮で美味しいいちごを見分けるコツをこっそり教えてもらいました。
ピンと逆向きに張ったヘタがポイントだそう。

半信半疑の庵主、さくらんぼいちごを一粒、柔らかな求肥餅と餡で包んで、一口。
「これだ!」 田村さんと、庵主。
それぞれのこだわりが出会って、ようやく一つのお菓子が出来ました。

田村さん

今ですね、さくらんぼいちごに加えて、次の世代の苗を研究しています。

さくらんぼいちごの名前の由来は、「枝を残したまま出荷する」ところから。
デリケートな苺の果皮を直接触らずに出荷するための工夫です。

次はどんな苺がくるんだろう、どんなお菓子にしてやろう。
今からとても楽しみです。

いちご大福

もぎたての苺が求肥のお餅でふっくら包まれた様は、まるで純白の綿帽子をかぶった花嫁さんのよう。
茜庵の春を愛らしく清楚に飾る、大人気の生菓子です。
*直営店のみの販売となります。

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