茜庵

「育てるうつわ」
繊細な粉引き茶碗と、つきあう。

まだらになって、青ざめる。

粉引(こひき)のうつわ。
目止めが必要というところまでは、おぼろに知っていましたが、
庵で初めてお湯にくぐらせた途端、
みるみるうちに、まだら模様に。
どうしよう、やってしまった・・・
慌てて社内でみてもらったところ、「粉引は、そういうものなのよ」と
いう先輩からの心強いひとこと。よかった・・!

目止めとは:器を手に入れた日の、最初のお手入れ。
陶器には目に見えない小さな穴がたくさんあり、
この穴に食物や飲料が入り込むことで、変色や臭い移りが起こります。
目止めはそれを防ぐために、水や米のとぎ汁で表面を覆うこと。
シミやひび割れの予防にもなりますよ。

みるみるうちに、まだら模様。あわててお湯から救出。

粉引とかいて、こひき。

陶器の一種である、粉引のうつわ。
「粉を引いたように白い」が由来のこのうつわ、
その名のとおり、素地に白い泥をかけて土台をつくり、
上から釉をかけています。粉引をすることでうまれる、
ほんわりと優しく温かい印象と、独特の手触りが魅力。
一方、素地と釉薬の間にもうひとつ層ができるため、
通常の陶器より割れやすく、また汚れやシミが
が付きやすいという難点も。繊細なんです。

乾くと消える!から、一安心。

お湯をくぐらせた途端に出てきた、斑点模様。
「乾くとそのうち消えるよ」との言葉どおり、
朝に出たまだら模様は、午後にはすっかり気にならなくなりました。

この粉引の斑点、茶人は「花がさく」という表現で
愛でることもあるのだそう。

繊細さも、変化も、魅力のひとつ。

土から生まれた陶器のうつわ。「まだらになった、どうしよう!」と
慌てていると、「呼吸をしていると考えればいいのよ」と教わりました。

他の陶器よりも柔らかく水分を蓄えやすいので、
日々使うことによって変化がでやすい。でもそれこそが粉引の魅力なのだそう。
水に浸すと、まだらになるのは、ごくごくと喉を潤すように
水分を湛えている。使えば使うほど、まるで年を重ねるように
味わいを蓄積していく。

変化を楽しみ、いびつさを愛し、
長年寄り添うことで器が育つという、考え方。

それこそに、和のおおらかさ、
ゆったりとした優しさがあらわれているような気がします。

菓游 茜庵

四国徳島城跡をのぞんで佇む、静かな菓子の庵。 上質ながら、遊びごころあるお菓子づくりを大切にしています。 心地よく和と暮らすお手伝いができれば幸いです。

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