菓游 茜庵
四国徳島城跡をのぞんで佇む、静かな菓子の庵。 上質ながら、遊びごころあるお菓子づくりを大切にしています。 心地よく和と暮らすお手伝いができれば幸いです。
神無月の喫茶に、ようこそ。
さらりと通る風が、秋ですね。
9月の十五夜は有名ですが、実は10月にもお月見の機会があります。これが、十三夜。
秋のお月見は 収穫祭の意味合いもある行事。9月の十五夜には「芋名月」、続く十三夜には「栗名月」という別名がついています。
希少な白小豆の練り切りに、季節の栗を滋味深く とりあわせて。
お茶の世界では、十月は「名残(なごり)の月」と呼ばれます。何をもって名残なのかーこれには諸説があるのですが、今月は菓子にもお道具にも、少し寂びた美しさを留め置くこととしています。
どこかもの寂しく侘しい風情。だけれども理屈っぽく小汚い室礼にしたのでは、いかにも自己満足で いただけないー十月は、まさにwabi-sabiスキルが問われる、難しい月なのです。
さて、お軸。「秋は消息」という言葉の通り、秋はどこか暖かな人の気配がする「手紙」を軸に使うのにふさわしい時季。こちらは小堀遠州の竪文でして、書流は定家様で書かれています。
秋の某月26日のお茶会の待ち合わせについて、弾むような気持ちが伝わってくるような文。
小堀遠州といえば、”綺麗さび”。垢抜けた美しさの表現が持ち味の江戸大名であり、茶人。
和歌や書に精通し、茶道具のデザインを系統立てて把握できるような仕組みを作ったかと思えば、日本を代表する建築・造園の作事奉行でもあったというから、これぞ天才。
あわせた屏風は、遠州のベストフレンドである松花堂好みの風炉先屏風。お弁当・・?と思った方はご明察、現代では松花堂弁当の語源で知られる松花堂昭乗は、僧侶であり寛永文化人のトップスターでもありました。
古楽山の茂山写しが、綺麗さびの世界を彩ります。
「立礼席(りゅうれいせき)」とは、椅子とテーブルの茶室。茜庵本店で喫茶をご利用のお客様には、こちらのスペースでお菓子をお楽しみいただきます。
こちらの席も、今月は名残の世界観を踏襲。
月夜の海女の漁をうたったお軸に、釣船の花入。ゆらぐ影をうつして、コーディネート。
欠けをつくろい、割れを継ぐー 慈しみの美がことさらに愛おしい、10月は、そんな季節です。
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しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。